日本原子力技術協会(以下JANTI)殿からの業務委託(2008年度)を受け、電力殿のご協力を頂きながら「運転員チームワーク向上訓練コース」の開発に取り組んで参りましたが、2009年3月3日から5日にかけての3日間で「試運用」を行いました。 模擬受講者のご派遣にあたっては、各電力殿にご協力を頂きました。 このほかオブザーバーの皆様にも訓練の実施状況を観察して頂きました。
 コースのタイトルからは、運転当直チームを対象とする訓練のように思われるかもしれませんが、
@上級運転員:効果的な「マネジメント」=「運転員の統督」の実践
A中級運転員(当直主任クラス):「リーダーシップ」の発揮

をねらいとして、運転員の職位別に2つの訓練コースを開発致しました。これは、運転員のチームワークを向上させるにはこの2つの職位の方々がそれぞれに期待される役割を果たすことが特に重要、という分析知見に基づいております。

 訓練内容は、SAT(体系的な訓練プログラム構築法)に基づいた設計・開発を経て、下記の主要テーマにより構成致しました。
@上級運転員向け(フェーズ1):「運転のプロ意識」、「チームマネジメント」、「意見対立の解消」、「コーチングスキル」
A中級運転員(当直主任クラス)向け:「リーダーシップ」、「コミュニケーション」、「チーム構築」、「意見対立の解消」、「ストレス管理」

 いずれのテーマも、従来BTCで担当してきた「知識・技能の教育訓練」とは趣を異にし、対人的な能力(いわゆるソフトスキル)の開発に属する内容でした。 そこで、今回の開発に先立ち、世界原子力発電事業者協会(WANO)の支援を受け、米国の原子力発電運転協会(INPO)が、リーダーシップセミナー/プロフェッショナル開発セミナーなどの名称で発電所の管理者向けに開発・提供しているプログラムに参加する機会を得ました。更に、カナダのオンタリオ発電会社(OPG)が行っている同様のセミナーにも参加する機会を得ました。


 このような分野の教育訓練は、国内電力会社においても、特定職位への昇格時などに、職務によらず一般的な内容で行われているものはありますが、受講後に自分の職務にあてはめて成果に結びつけるのが難しいという声が聞かれておりました。 そこで今回の開発では、受講対象者を運転員に限定することで職務に直接マッチした内容とし、職場に戻ってから実践しやすいものを目指しました。
 また教育訓練の方法についても、対人的な能力がテーマであることから、一方的な講義で知識を詰め込む方式では十分な効果が期待できません。 そこで、参加者同士でディスカッションを深めながら必要性に気付き、納得して職場に戻れるような進め方を致しました。

 模擬受講者の皆様、およびオブザーバーの皆様からは、試運用によりチームワーク訓練の必要性を感じることができた、受講(ないしは観察)した訓練プログラムの構成はほぼ適切であった、などのご講評を頂きました。一方ディスカッションの進め方には更に改善の余地がある、などのご指摘も頂きました。

 JANTI殿は本訓練コースの充実を図る計画であり、更に試運用経験を積みながら、ディスカッション等の実施要領にも改善をはかり、ご派遣元のニーズに合った訓練コースとなるようブラッシュアップに取り組んで参ります。